この映画はカラダにくる。
『Love Letter』『スワロウティル』の岩井俊二が到達したひとつの頂点
「…自分で遺作を選べるなら、これを遺作にしたい」
ウェブサイト上で、一般参加者たちとの対話の中から物語を書いてゆくという、異色のスタイルで発表されたインターネット小説「リリイ・シュシュのすべて」が、岩井俊二監督自身の手で映画化された。
田園が美しいある地方都市で、窒息しそうな毎日をおくる十四歳の少年にとって、カリスマ的アーティスト、リリイ・シュシュだけがリアルに存在する。
「十四歳」を演じるのは、岩井演出によって、その魅力を最大限に引さ出された、原石の少年少女たち。
小林武史によるリリイ・シュシュのサウンドと、田園風景を包み込むドビュッシーのピアノ曲が流れるなか、物語は、インターネット、少年犯罪、いじめなど、現代的なテーマを内包しながら、少年の痛みと、焦燥、そして内面に隠れたイノセンスを鮮烈に描き出す。
かつて誰も描かなかった、いや、描けなかった“あの頃”の特別な一瞬がここにある。
《彼女が生まれたのは、》《1980年12月8日、》《22時50分》
《この日付けは、ジョン・レノンが、》《マーク・デビッド・チャップマンに殺された日時と、》《一字一句符合する。》
《でも、僕にとって、》《この偶然の一致に意味はない。》
《僕にとって重症なことは、》《その日、その時刻に、》《彼女が誕生したということだけだ。》
《彼女の名前、》《“リリイ・シュシュ。”》
《天才。》《というより、》《宇宙。》《エーテルの具現者。》
《投稿者:フィリア》
《っていうか、》《リリイってダレ? って感じ。》《投稿者:S》
《でしょ?》《曲聴いてもぜんぜん感じないしさ、》《なんかみんな洗脳されてるよ。》《投稿者:カエサル》
《???》《皆さんが、口を揃えて言ってる、》《エーテルって何?》《投稿者:Free Bird》
《この映画のタイトル>『リリイ・シュシュのすべて』》
《監督・脚本>岩井俊二》
小山内 |
「一年の頃がんばりすぎると、二年、三年になって中だるみすることがよくあるのね。
おんなじように勉強してるんだけど、結果がなぜかついて来ない。
今のうちぐらい遊びたいって気持ちが出てきたり?
そうなると、ズルズル成績が下がって、下がれば下がるほどやる気もなくなって、ああ、もういいやって」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小山内 |
「そんな感じ?」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小内山 |
「蓮見君の場合、ズルズルっていうよりガクンって感じなのね」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小内山 |
「なんか、打ち込めないって感じ?」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
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ずっと下を向いて黙っている雄一。 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小内山 |
「・・・・なんか悩み事とかある?」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小内山 |
「・・・・・・・・」 |
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雄一を見つめ、返答を待つ小内山。 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・ないです。」 |
小内山 |
「・・・・そう。じゃあ、ま、いいです。
先生からは、がんばれとしか言えないけど、ま、そうね・・・・うん、まあ、がんばってね」 |
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席を立つ雄一。 |
小内山 |
「がんばんないと。いまがんばんないと、ね」 |
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机の上の整理をはじめる小内山。一礼して部屋を出ようとする雄一。 |
小内山 |
「あ、音は?」 |
蓮見雄一 |
「・・・・・・・・」 |
小内山 |
「へんな音。しなくなった?」 |
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うなずく雄一。 |
小内山 |
「あ、久野さんにもう帰るように言ってくれる?」 |
監督・脚本:岩井俊二/撮影:篠田昇/音楽:小林武史
出演:市原隼人/忍成修吾/蒼井優/伊藤歩/大沢たかお/稲森いずみ/市川実和子
2001年/カラー/ビスタサイズ/dts5.1ch/2時間26分/製作・配袷:ロックウェルアイズ/配給協力:日本ヘラルド映画/宣伝:樂舎
Lily Chou-Chou Partners(日本ビクター、WOWOW、TUBE ENTERTAINMENT、OORONG・SHA.ROCK WELL EYES)
www.lily-chou-chou.com
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