山の郵便配達/POSTMEN IN THE MOUNTAINS

時を越え、幾山河を越えて、
手紙に込められた想いは届く…

初めての<旅>が紡ぎ出す、
家族の“絆”の物語。

 1980年代初頭、中国湖南省に、現代でも交通手段のない険しい山岳地帯を仕事場とする、年老いた一人の郵便配達人がいた。送る人、受け取る人の思いを紡ぐ手紙を、大きなリュックに詰め込んで、何日もかけて配達する。愛犬“次郎坊”とともに、山から谷へ、川を横切り、再び山へ…体に重いリュックを食い込ませて、彼は歩きつづける。
 そして今日―。退職を目前にした最後の配達に、年若い一人息子を連れて行く。妻と息子へのいたわりの言葉を心に秘めて、仕事を息子に引き継ぐために。二人は折に触れ、山郷に住む人々の一途な心情と素朴さを肌で感じ、少数民族の美しい少女との出逢い(かつて父も母と同じように巡り会い、結婚したのだ…)を通して、しだいに打ち解け、心を通わせていく。
 緑濃い、美しい大自然の中で繰り広げられる、この特別な<旅>は、父、母、息子…そして家族の“絆”を取り戻す旅でもあった。

いま父から息子へ、妻から夫へ、
そして親から子へ―!

 遠く離れた家族に、恋人に、便りを書く…そして返事を待つ。1通1通には、人々のさまざまな想いが込められていて、人生の喜びや悲しみが綴られている。その手紙を日夜、集配する郵便配達の家族が、この映画の主人公である。
 じっと、仕事に打ち込んできた父、寡黙で留守がちな父に心の隔たりを感じている息子、長い年月、いつもそばで父を支え、息子をやさしく包みこんできた母…心から心へ、世代を超えて継がれる郵便配達の仕事と、変わることのない家族の姿がここにある。かつてわが国にもあった懐かしさにあふれる自然の風景、山村の生活、夏祭りの高揚、美しい山の娘との出会い―それらはしっとりと穏やかな映像に映し出され、いつしか深い感動を観る者の心に呼び起こす。
 「山の郵便配達」に描かれた家族のあり方と、清涼感あふれるドラマは、フォ・ジェンチイ監督が現代に生きる私たちに投げかけた、心から心へのメッセージなのである。

アジアが、そして世界が
この1作に胸を熱くした。

 中国のアカデミー賞である1999年金鶏賞は、チャン・イーモウの「あの子を探して」が圧倒的優位と囁かれていたが、結果は、フォ・ジェンチイの『山の郵便配達』が、作品賞と主演男優賞の主要な賞に輝いた。原作は、1983年全国優秀短編小説賞と湖南省第1回青年文学賞を受賞したポン・ヂエンミンの短編小説「那山 那人 那狗」。脚本は監督夫人でもあるス・ウ。緑の山間の風景が印象的な撮影は、ジャオ・レイ。心洗われる音楽はワン・シャオファンなど中国の俊英スタッフが結集。父を演じるトン・ルゥジュンは、「紅いコーリャン」の“羅漢おじさん”で脚光を浴び、息子役のリィウ・イェは、本作で金鶏賞最優秀助演賞にノミネート。この他、温和な母役にジャオ・シィウリ、愛らしい笑顔の山里の娘に、新星チェン・ハオなどキャストも注目の顔ぶれがそろった。また郵便配達に同行するジェパード犬“次郎坊”には、動物好きならずともたまらない愛おしさを覚える。

フォ・ジェンチイ(霍建起)監督作品 トン・ルゥジュン(滕汝駿) リィウ・イェ(劉Y) ジャオ・シィウリ(趙秀麗)/原作●ポン・ジエンミン(彭見明)「集英社・刊/2001年3月発売予定」
瀟湘電影制片廠・北京電影制片廠・湖南省郵政局 共同制作 1999年度作品/ドルビーSR/ビスタサイズ/上映時間:93分
キネマ旬報社/エフ プロモーション/東宝東和 共同提供

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