そしてそうした人の心の動きをシンプルに描いた映画だ。 ―デイヴィッド・リンチ
アメリカ・アイオワ州に住む73歳のアルヴィン・ストレイトは娘のローズと二人暮らし。ある日、10年来仲違いしていた76歳の兄ライルが心臓発作で倒れたという電話が入り、アルヴィンは、若いするために、兄に会いに行かなければと思う。ライルか住むウィスコンシン州までは、車で行けば1日の距離だが、アルヴィンは車の免許を持っていない。しかし、どうしても自力て行かなければならない。ローズの反対を押し切って、アルヴィンはたったひとりてトラクターに乗って旅に出ることを決意する。それは、目も体も不自由な老人が、時速8kmのトラクターで、560km離れたウィスコンシン州へと向かう、6週間の長旅の始まりだった…。
わすれていた大切なことを思い出させてくれる 1994年にNYタイムズに掲載された実話に基づいたこの作品は、一見これまでのデイヴィッド・リンチの監督作とは180度変わったかのように見えるが、リンチの公私にわたるパートナー、メアリー・スウィーニーが友人のジョン・ローチとともに書き上げた脚本を読んで強く心を動かされたリンチは、自ら監督することを名乗り出た。「これはとてもまっすぐ(ストレイト)な物語なんだ」とリンチ自身が語るとおり、主人公のアルヴィンは、兄に会って和解する、ただそれだけのためにひたすらまっすぐに進み続ける。広大なトウモロコシ畑、どこまでも続く道、そして満天の星空。ゆっくり進むことで初めて見えてくる風景、空の大きさ、星の美しさをかみしめながら、さまざまな人に出会い、自分自身の人生を再確認しつつ、何度トラクターの故障にあっても、手助けしようという申し出も頑固に断り、ひたすら兄ライルの家をめざすアルヴィンのひとり族が、今、世界を優しく温かい涙と感動で包んでいる。わすれていた大切なことを思い出させてくれる、いつまでも心に残る名作として、アメリカではディズニーが配給。マスコミにも絶賛され、アカデミー賞最有力候補の呼び声も高まる中、いよいよこの感動が日本にもやってくる。
そして名優&名スタッフによって、 主人公アルヴィンには、ジョン・フォード作品などで長年スタントマンとして活躍し、83年の『グレイフォックス』で初主演して高い評価を受けた、79歳のリチャード・ファーンズワース。「この役のために生まれて来た役者」とリンチが評するとおり、演技を超えた名演が、観る者の心を打つ。その娘ローズを繊細に演じるのは、アカデミー賞女優であり、リンチの親友でもあるシシー・スペイセク。そして、兄ライルには『パリ、テキサス』以来の印象的な演技が光るハリー・ディーン・スタントン。脚本を手がけたメアリー・スウィーニーが編集と製作も担当。撮影は『エレファント・マン』『デューン/砂の惑星』でもリンチと組んだ80歳の名匠フレディ・フランシス。美術はリンチと学生時代からの親友で、シシー・スペイセクの夫でもあるジャック・フィスク。音楽は『ブルーベルベット』以来、リンチの全作品に参加しているアンジェロ・バダラメンティ。まさにリンチ・ファミリーともいうべきキャストとスタッフが結集して、20世紀最後を飾る珠玉の名作が誕生した。
リチャード・ファーンズワース/シシー・スペイセク/ハリー・ディーン・スタントン 音楽:アンジェロ・バダラメンテイ(サントラ:BMGファンハウス) オリジナル・ノヴェライゼーション:村上龍(集英社刊) 1999年/アメリカ映画/1時間51分/カラー/スコープサイズ/ドルビーDS 提供:コムストック/テレビ東京/ポニーキャニオン/テレビ大阪 宣伝協力:ティー・マーク 配給:コムストック |