見島の人口は現在1,292人(平成9年度・見島の概要より)で、そのうち255人が自衛隊員とその家族だ。単純に計算すると、島民の5人に1人は自衛隊関係者だということになる。両者の関係はとても良好で、自衛隊の行事(注2)や島の伝統行事には両者とも積極的に参加している。その他にも、スポーツの好きな隊員が自主的にバレーや剣道や空手を島の子供たちに体育館で教えたりしているという。
見島における自衛隊の主な任務を一言で表すと、情報収集である。日露戦争時の海軍望楼、太平洋戦争時の見張所、終戦後の米軍レーダー監視所、そして現在の自衛隊通信基地にいたるまで、いずれも戦略的・国防的重要性から見島という地点を選んだのだった。自衛隊基地は全国の様々な場所に存在し、基地に対して逆風の吹く地域も少なくないが、見島の場合は軍事基地というよりも通信施設に近く、例えば沖縄のような基地に対する住民側の反発は全くない。しかし、中国・北朝鮮・旧ソ連といった日本海側の国々を意識したときに、いったい誰が見島は安全だと断言できるのだろうか。ひとたび戦争が起これば、軍事基地であろうが通信基地であろうが真っ先に敵から狙われることには変わりない。佐々木郡司令(注3)が語った以下の二つの言葉からは、自衛隊と見島の複雑な関係が少しだけ見えてくる。「朝鮮戦争が勃発した時、見島の自衛隊の緊張感は極めて高かったんです。なにしろ、あの時の見島はまさに最前線だったからね」「このさき見島が無人島になったとしても、自衛隊基地は絶対に必要です」。
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